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未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[高校編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。わからないことだらけのアメリカでの生活を振り返る石黒加奈の「ちょびつき」留学日記・高校編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 25 : プロムの思い出

アメリカの高校にはイベントが多いのですが、卒業式が近くなると、みんなの関心は「プロム」(prom)のことへ向きます。
アメリカの高校や大学で、プロムと言えば、ダンスパーティのことです。しかし、週末にDJを呼んで開く普通のパーティではありません。もちろん、州によって多少習慣は異なりますが、卒業前の3年生が正装して、男女のカップルで参加する煌びやか(fancy)なパーティです。

とくに寮の女の子たちは、このパーティにだれと一緒に行くのか(この相手のことをdateと言います)、何を着ていくのかと、まるでお城に招待されたシンデレラの姉妹のような大騒ぎをします。

もちろん1年目は、
「なんで、みんなスモモ (plum)の話で盛り上がっているのかな〜」
と例のごとく、状況を全然理解できなかったのですが、期末試験を終えて日本へ帰る支度をしていると、部屋に今まで見たことのないような美しい女性が入ってきたので、とても驚いたことを今でも覚えています。

なんと、その女性は、アドバイザーのアネット先生でした。アネット先生は生徒をパーティへ引率する役目だったので、自らも着飾っていたのです。1年間、毎日のように顔を会わせていた先生なのに、
"Kana, this is Annette!"
(あたしよ、あ、た、し!)
と言われても、私はしばらく口をポカーンと開けたままでした。

"Why don't you come down? You can see the seniors dressed really nicely down there."
(1階へ降りていらっしゃいな。上級生は、みんなとってもきれいよ)
と言われて、急いで1階へ降りて外へ出ると、寮の前の大きな階段から、次々にお姫様のような上級性が降りてきました。そこでは、いつもはジーンズ姿で髪には寝癖なんかがついている男子生徒が、それぞれ自分の相手とおそろいの花(corsage)を胸につけ蝶ネクタイ姿で待っていました。

彼らと彼女たちの美しいことといったら、アカデミー賞やグラミー賞の授賞式に集まるスターたちのような艶やかさ!

アメリカの高校生は、学校にお化粧をしてきてもいいのですが、それでも、日ごろは、みんな飾りっ気なんてあまりなくて、いつも似たようなジーンズとTシャツといったカンジ。しかし、この日ばかりは、美容院へ行き、お化粧もして、その8頭身の美しさを見せつけんばかりのドレスをまとっていました。

2年生のときのプロムでは、
"Hey, Ryan asked Rachel to go with him!"
(ライアンがレイチェルを誘ったわ!)
と、ホールの女の子が大騒ぎをしていました。ホールメイトのレイチェルが、高校3年生でいちばんハンサムなライアンに、プロムのデートとして誘われたのです。

これは、私たちホールメイトにとっても、たいへんなニュースでした。なにしろ、ライアンと言えば、水泳部のキャプテンで、当時女子寮の憧れの的。そのうえ、プロムは、3年生が「卒業式の前に思いっきり楽しむ場」とされていて、デートの相手は、ほぼ3年生の中から選ばれるからです。

みんながこれほど喜んだのは、レイチェルが美人なだけでなく、性格も優しくて頭もよく、とても素敵な女の子だったからでしょう。私にもとても親切にしてくれたし、アメリカ文学のクラスを一緒に取ったときは、毎回素晴らしい意見を言う彼女に感心させられました。

"How did he ask you?"
(どうやって申し込まれたの?)
"What are you gonna wear?"
(何を着ていくの?)
"Did he kiss you?"
(キスされたの?)
とレイチェルはホールの女の子たちから質問攻めに合ってしまいました。私は、直接質問はしなかったけど、耳はもちろんダンボでした(苦笑)。

そしていよいよ3年目のプロム! 私たちが主役の年です。しかし、バレンタインデーでの教訓(lesson)を学んでいない筆者は、また、ここでのんきに、だれかが誘ってくれるものだと高を括っていました。

ところが、待てど暮らせど、だれからも申し込みがありません。困っている私を見て、同じ留学生でソウルから来ているウォン君が
"Do you want me to come?"
(行ってあげようか?)
と声をかけてくれました。

このウォン君と初めて会ったのは、2年前に彼がジョージ・スクールに入ってきてすぐのことでした。理科の教室の前ですれ違ったとき、生意気そうな顔をして私をじぃーと見た男の子がいたので、とても印象に残ったのです。

その後、カフェテリアで2人分の食事をする姿を見て、私に興味を持ったからか、ウォン君とよく話をするようになって、親友になりました。

今だったら、そんなふうに誘ってもらえたら、すぐにお願いするのですが、そのときの私は下らない理由で断ってしまいました。

まず、ウォン君は学年がひとつ下だったので、自分からだれかをプロムに誘うことはできません。誘う権利は3年生にしかないからです。となると、もし、ウォン君と私が一緒に行けば、私のほうがウォン君を誘ったということになります。つまり、3年生の男の子にはだれからも誘われなかったということを公表するようなものです。

そこで、つまらない見栄を張り
"I am SURE someone is going to ask me!"
(だれか、3年生が誘ってくれるから、いいよ)
と言ってしまったのです。

ところが、だれからもお誘いが来ないまま、パーティの出欠席を決める日になってしまいました(欠席する人はほとんどいません)。その頃には当然、みんなはもうとっくにデートを見つけていました。

"Wonny! Can you come with me……!?!?"
(ウォンちゃまー。一緒に来とくれよ〜)

と、土壇場になって私が懇願すると、ウォン君は散々笑ったあげく、イエスと言ってくれました。

当日、寮の女の子と一緒にブルーのドレスを着て、寮の前の階段を下りていくと、ウォン君がほかの男の子と一緒に待っていました。

ウォン君は、ソウルでも有名なデザイナーの叔父さんがいて、ファッションのセンスが抜群でした。彼が着ていたタキシードは、男子生徒の中で、いちばん格好良かったことを記憶しています。

私が腕につけたコサージュとお揃いの白いバラが、ウォン君のタキシードの胸でも光っていました。

ああ、青春だな〜。

最終回へつづく。

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