いまはちょうど、たくさんの方が就職活動をしていらっしゃる時期だと思います。大学生の方は学生から社会人へのtransition(移行期)なので、とくに、不安になったり、自信がなくなったり、辛い思いをたくさんしているのではないでしょうか?
私にとっても、就職活動はたいへんな経験でした。どんな仕事があるのかも、自分がどんな仕事がしたいのかも分からないし……。
そんな就職の悩みに加えて、私には、アメリカの生活から日本の生活にadjust(適応)しなければならないという大きな課題がありました。
アメリカの教育は、self-reliance(自立)、いい意味でのindividualism(個人主義)を教えられ、年上や目上の人に対しても自分の意見をはっきり伝えられるように、と教えられました。
それは、conformity(協調性、和)を重んじる国の文化の中で育った私には、なかなかなじめない考え方でしたが、7年間の留学でようやく身についてきたかと思えるようになってきたとき、改めて日本の文化に触れると、逆にとても不自由で窮屈に感じました。日本語を話すたびに、見えないものに縛られているような、抑圧されているような錯覚さえおぼえたものです。
こんなふうにまったく異なった2つの文化を体験した人間が、その両方を活かせる職場を見つけるのは、やはり時間がかかりましたし、紆余曲折がありました。
大学を卒業して4年目にやっと、ジャパンタイムズという会社に出逢うことができました。27歳を迎え2ヶ月が経った頃です。前職で百科事典のサイトを担当していた経緯もあり、ジャパンタイムズ・オンラインを作成する、編集局電子メディア部に配属になったのです。
当時の直属のボスは、Jさんという2メートル近くもあるアメリカ人のプログラマーの方でした。
最初の1ヶ月ほど、私にトレーニングをつけてくださったのですが、あまりに私がコンピューターについて知らないことや注意力がないことに対して、まったくイヤミのない同情したようなトーンで、
"You must have bad eyesight? Why don't you get yourself a pair of glasses?"
(きっと、視力が悪くなっているんだよね? メガネを買いにいったら、いいよ、きっとね。うん)
と、自分を慰めるようにおっしゃっていました(苦笑)。
その後、2年間お仕事をご一緒させていただいて、ほんとうに信頼関係ができてからのことですが
"You know, when you first came into my office, I wrote in my diary 'I hate having a hopeless worker, like Kana, forced on me by my boss.'"
(いや、君が最初に入ってきたときは、日記に「使えないスタッフは絶対に押し付けられたくないものだ。例えば、カナとか…」と書いたんだよ)
と、告白されました。よくここまで来たね、と、その後フォローを入れてくれたのですが…(冷や汗)。
あらゆる人に、忍耐力の塊と褒められた上司のJさんのお陰で、私はそれまでの27年間すべての経験を活かすことのできるジャパンタイムズで、『週刊ST』のウェブサイトを作成するという、とても興味深い仕事をお手伝いすることができるようになったのありました。
つづく
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