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未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[仕事編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。コロンビア大学卒業生石黒加奈がトラブル続きの留学生活を終え、帰国してからの生活を振り返ります。就職活動から、ジャパンタイムズでの日々の様子までを振り返る「ちょびつき」留学日記・ジャパンタイムズ編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 9 : ジャパンタイムズでの健康診断

みなさんの会社でもそうだと思いますが、ジャパンタイムズでも健康診断があります。年に一度やるだけなんですが、その1年の経つのが早いこと、早いこと。

心電図を取る順番が来るのを待っている席で、管理局のYさんと、
Yさん: あたし、お腹がすいてヨーグルト食べちゃったんですよ。
ちょび: それは、ぜったい、まずいですよー
Yさん: それから、体重軽くなるように薄着で来ました(爆笑)。
ちょび: あたしは、背が高くなるように厚手の靴下履いて来ました。
なんていう会話を、毎年繰り返しているような気がします。

胃のレントゲンを撮ってもらう外国人スタッフのJさんも、
"You know that thing you drink first? The taste of it kills me. Makes you sick for the rest of the day."
(ほら、最初に飲む「あれ」あるでしょう? ひどい味。「あれ」を飲むほうが、病気になっちゃうって感じだよね?)
"I don't know why they never improve the taste."
(そうそう、何年経ってもおいしくならないよね、ほんと)
なんて、やっぱり、毎年同じようなことを言っているんですよ(笑)。

それにしても、会社のあちこちを回って受ける健康診断(検診の種類によって階が分かれているんです)は、一種、夏の「肝試し」のようなスリルと楽しさを感じます(って、日ごろ、どんなつまらない人生を送っているんでしょう?!)。このイベントは、毎年あるとわかっているはずの落とし穴に、きっちり落ちてしまうところがいいですね。

例えば、私は、学生のとき、とっても目がよかったんです。視力は2.0ぐらいあって、黒板の字が見えないとかは全然ありませんでした。留学する前は、教室の一番後ろの隅に座っていても、対角線上の前の端に座っているクラスメートの答案用紙が見えるくらいよかったんですよ。(笑)

留学してあんなに英語の本を読まされたのに、この視力は落ちませんでした。本をベッドで読んだりしないで、いつも机で明かりをコウコウと照らして勉強していたからかもしれません。

ところが、就職してコンピュータを使うようになって、急激に目が悪くなってしまいました。

会社でもよくメガネをかけているんです。それなのに、レントゲンを撮るときには貴金属をすべてはずさなければいけない、ということで、自分の机にネックレスやなんかを置いていくと、必ずといっていいほど、メガネを忘れてしまうんですね。

視力の検査の列で、やっと自分の番になって、
「あっ、メガネ忘れた!」
と、毎年やってしまう。周りの人に、「どうしたんですか?」という目で見られながら、自分の机まで取りに行くという始末。

それから、もうひとつ。毎年あるのは、女性の検診時間に、なぜか、どうしても出席しなければいけない会議が入ってしまうことです。で、結局、男性スタッフの検診時間のトップ・バッターでやらせていただいて、男性外国人スタッフからは、
"I though, she was a girl. Well, there are lots of pretty boys these days in Tokyo...
「あれ、この子、女の子じゃなかった? でも、東京って、女の子みたいにしている男の子も多いから…」
という、視線を浴びせられ、
"Excuse me..."
(すーみーまーせーん)
と、蚊のなくような声で、レントゲンや血液検査の最前列に入れてもらうのでありました。

そんなドラマ(?)を経て、数週間の後、社員の個人情報を握っている局長が、
「君は、この間の健康診断の結果、ずいぶんよかったよ。会社で1番いいくらい」
と、こっそり教えてくれました。
「いやいや、若いですし、お酒も飲まないし、タバコもすわないし…」
「若い子、もっと、いくらでも、いるよ(笑)。そういう問題じゃない」
「あちゃ(笑)。こんなに一生懸命働いているのに、どうして、そんな、元気なんでしょうね? 鬱病は、数値に出ないんですかね?(苦笑)」
という会話が繰り広げられるのでした。

つづく

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