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「ちょびつき留学英語日記」好評発売中!
未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[大学編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学後、高校を卒業し、コロンビア大学に入学した筆者がトラブル続きの留学生活を振り返る「ちょびつき」留学日記・大学編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 5 : クラスメートは、インターナショナル?

移民や留学生が毎年たくさんやって来るアメリカでは、コロンビア大学だけでなく多くの大学で、英語が母国語でない生徒のために、付属の"Language School"(語学学校)が設置されています。
ちょびつき筆者は、コロンビア大学の入試(このエピソードは、またいずれお話できればと思っています)で、辛うじて講義を受けられる程度の英語力があると判定されました。それは、コロンビアの語学学校では"8B"のレベルです。語学学校でのレベルは、下から順に1A、1B、2A、2B、…といった具合に20段階に分かれています。同じレベルでも、定員(15人ぐらい)を超えるとクラスが分けられるので、同じレベルのクラスが2つや3つになることもよくありました。

さて、International Students(母国語が英語でない学生)が大学で、最も基本的なライティングのクラス(論文の書き方のコース)を取るためには、語学学校のレベル10Bを、必ずパスしていなければなりません。

そして、私のような文学部の学生は、ライティングのコースをすべて終えないと、「アメリカ文学1001」や「イギリス文学1001」などの概論講義(基礎を勉強するためのもの)さえ取ることができません。

つまり、入学当時の私は、大学生として、また文学部の学生として、まだまだスタートラインにすら立っていないという、途方もない状況にいたのです。

"When am I gonna ever be able to graduate?"
「いつ、卒業できるのだろうか?」
という漠然とした不安を抱えながらも(現在抱えている、いつお嫁にいけるんだろう、という気持ちと似ていると思う、なぜなら自分の力だけではどうにもならない気がするから)、当時は若くて元気だったので、いつまでも落ち込んでいるようなことはありませんでした。

私を明るい気持ちにしてくれた要因のひとつは、付属の語学学校でのクラスが、実に愉快なメンバーで構成されていたことでしょう。

なかでも、いちばん興味深かったのは、エジプトから来ている学生や、台湾から来ているお坊さん(彼の話によるとコロンビアには、仏教に関する貴重な資料がそろっているそうです)と一緒のクラスになったときでした。
エジプト人のA君が
"Those who drink the water of the Nile are bound to return to Egypt."
(ナイルの川の水を飲んだ者は、エジプトの地に帰るとされている)
なーんていう、映画のワンシーンみたいな作文を読み上げたかと思うと、
"I am against killing animals for pleasure."
(娯楽のために、動物を殺すことには反対です)
と、物腰の柔らかい僧が、闘牛好きのスペイン人の学生の隣で、発言するといったような、実に変わった光景を目にすることが日常茶飯事でした。

動物愛護のシンポジウムなどであれば、こういった討論が繰り広げられるということも想像できますが、語学学校でこんな体験をするとは思ってみず、毎日、ディナーにラーメンと生ハムサラダを同時に出されたような気分を味わっておりました。 今でも、自分の意味不明な性格について考えるたびに、このクラスが私の人格形成に大きな影響を与えたことは間違いない、と確信しております。はい。

クラスで、日々こんな異様な体験をした後、エジプト人のクラスメートの真似をして、「ナイル川」(←英語のタイトルでなくカタカナです)という詩を日本語で書いて、山梨の親友の知恵ちゃんに送ったら、「あたし、横文字頭に入らないのよね〜。『笛吹川』(彼女の家のソバの山梨の川)とかいう詩は、どう?」なんて、言われてしまった筆者です。とほほ。こういう友だちがいるから、なかなか、詩の才能が開花しないんでしょうか?(笑)

まあ、それはさておき、語学学校のクラスはもちろん、留学生だけの授業になります。8Bのクラスでは、日本人は私だけでした。

ヨーロッパからはフランス、スペイン、オランダ、北欧からはノルウェー、スウェーデン、アフリカからはセネガル、アジアからは、韓国、タイと、ほんとうに世界中から学生が集まっていました。

大学の講義より少しくだけたフレンドリーな雰囲気もあって、教授は、最初のクラスでみんなに自己紹介をさせたり、先生によっては、自宅に招待してくださる方までいるくらいでした。

"I am from Madrid, Spain."
(スペインのマドリッド出身です)
と、すべての単語の後に、巻き舌のRの音が入るような発音で(←stereotype [ステレオの種類ではありません。固定観念のようなものです]? 笑)、肌の浅黒い短い髪の女の子が言ったかと思うと、
"I am from Paris, France."
(パリから来ました)
と、フランス人の男の子が言います。フランス人は、英語をしゃべっていても、 ParisとFranceという単語だけはフランス語のように聞こえました(これも、錯覚か? 人種差別か? 笑)。

そのうち、私の番が来たので、
"I am from Tokyo, Japan."
(日本の東京[のあたり]から来ました)
"Yamanashi, Japan"(山梨という地方から来ました)と言わずに、見栄を張ってみたのですが(どうも、田舎の出身を隠そうとする癖がある)、それが自分でおかしくなってニタニタしていたので、初日から、「またまた変な人」と思われてたにちがいありません。笑いを堪えて赤くなった顔を、しばらくして上げると・・・・・・。

"I am from Zurich, Switzerland."
(スイスのチューリッヒから来ました)

と、男性にしてはやや高い声が、長方形のテーブルのいちばん端のほうから聞こえてきました。

隣に座った背の高い学生より高い座高を利用して(中学生のとき、クラスでいちばん高かったです。教頭先生が「まさか」と言って2度も測ってくれたけれど、「まさか」ではありませんでした)、首を伸ばしてみると、それまでの人生で一度も見たこともないような、とてつもない美青年が座っていました。

つづく。

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