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「ちょびつき留学英語日記」好評発売中!
未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[大学編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学後、高校を卒業し、コロンビア大学に入学した筆者がトラブル続きの留学生活を振り返る「ちょびつき」留学日記・大学編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 13 : 「モーリー・ママ」

わたしが暗い気持ちで大学生活を始めたことは、以前お話した通りです。そんななかでも、今も仲良く付き合っているモーリーという親友ができたことは、一生の財産を得たようなものでした。 モーリーは白人ですが、黒人の文学や音楽が大好きで、彼女がダンスするのを見たら、だれもが恋に落ちてしまいそうな、素敵な女の子でした。

私は足が極端に小さいのに、なぜか、彼女の靴のサイズは私と同じで、いつも私が新しい靴を買うと、彼女が勝手に履いていってしまうのでした(爆)。洋服でも靴でも、私のものを着たり履いたりしているというのに、彼女のほうが、何倍もいかして見えるからハラが立つ(苦笑)。まあ、スタイルがまったく違うんですね・・・。ふふふ。

でも、あるとき私が、
"Don't freaking wear my new pair of black sandals in the rain. I got them in SOHO! You understand?" (あたしがSOHOで買った新しい靴、雨の日に履くなっつーの!) と、ガンガン説教をしたら、次に私の靴を履いて急に雨に降られたとき、裸足になって、靴を胸に抱いて部屋に入ってきたんです。

私は、そんないたずらで、おちゃめなモーリーを見て、
"You crazy little baby, why the hell are you walking barefoot?"
(ああ、なんておバカさんなの、裸足で帰ってくるなんて!)
と、泣いて抱きしめたこともありました。

モーリーは、もともと、とってもfunky (かっこよく)で、やんちゃな性格ですから、初めて、ルームメイトの私を見たときは、
"How did they decide to put us together? "
(どうして、こんなに似てない二人がルームメイトになったのかな?)
[↑入学前に、生活スタイルや趣味を調査するアンケートを大学側に提出しているので、雰囲気の合った女の子同士がルームメイトになるように考えられているはずなのに・・・]

と、思ったらしいです。
ところが、Prince(アメリカのファンキーな黒人歌手) が歌っている "Blue Light"というチャーミングな歌に影響を受けて、私が部屋のベッドの近くに青いライトを置いたら、その変人ぶりに興味を持ったのか、 "Hey, is that from the Prince song?"
(それ、プリンスの歌の?)
と、モーリーが初めて笑顔を見せて言いました。
"Yeah, I love Prince."
(うん、プリンス、好きなの)
と、返事をすると、モーリーは、珍しい動物を見つけたときのような顔をしました。きっと、地味で静かで、マジメそうなアジア人の女の子が、プリンスの大ファンという、ギャップに驚いたのでしょう(笑)。

"You've got his CDs?"
(彼のCD、持ってる?)
と、彼女が聞いたので、当時出たばかりのアルバムを貸してあげると、彼女は嬉しそうに、CDをかけ、そして、ちょっと踊ってみせてくれました。私は思わず、
"Cool!"
(きゃー、素敵!)
と叫んで、おおはしゃぎ!?
その後、モーリーは、Sade, Tracy Chapman, D'Angelo, Otis Redding と、次々に自分の好きなCDを聴かせてくれました。彼女は幼いときからクラシック・バレエを習っていたので、私が、CDの代わりにピアノでクラシックを弾いてあげることもありました。 彼女とは急速に親しくなり、大学を辞めて日本に帰ろうと思っていることも相談しました。すると彼女は、自分の両親の家のあるボストンで一夏過ごして、それから決めたらどうだろうか? と親身に提案してくれました。 そうしてボストンで過ごした夏の終わりに、NYの大学を受験することを決めた私は、来年もドリュー大学でルームメイトになろう、と誘ってくれるモーリーに、つらい報告をしなければなりませんでした。 "Molls, I am not going back to Drew. "
(モーリー、あたし、ドリューには帰れないよ)
モーリーは黙っていました。ドリュー大学が私に合っていないことを、モーリーは私以上に分かっていたようです。

その後、半年も経たないうちに、モーリーもドリュー大学を中退してしまいました。彼女は、20代後半になって別の大学に編入し、去年、やっと卒業したという手紙をくれました。

その数年前に、こんな夢を見たことがありました。モーリーをカフェで待っていると、聖母マリア像のように優しい表情をした彼女が、カフェに入って来ました。私は、無言で彼女に近づいていって膝まづき、彼女の膨らんだお腹に耳をあてました。そして、そのお腹にキスをするところで目が覚めました。とてもpeaceful(穏やか)な夢でした。

その話をモーリーにメールすると、こんな返事が返ってきました。

"Hey, my Japanese sister, Kana baby, I am pregnant."
(私のカナちゃん、私ね、妊娠したのよ)

いま、モーリーは、教師をしている黒人の旦那さまとかわいい元気な男の子といっしょに、ボストンで幸せに暮らしています。日本に来るために、貯金をしているとか・・・。

私に出会ったばかりのころは、
"Is Japan on the same continent as China?"
(ねえ、日本って中国大陸のはじっこにある国でしょう?)
なんて、言っていたアメリカン・ガールだったのに・・・。(笑)

つづく。

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