私は子供のころから、本を書くことを仕事にしたいと思っていたので、今の生活は、天国です。なかなか思ったとおりに書けず、期限に間に合うのかとビクビクするのは日常茶飯事ですが、それでも充実しています。
けれども、もし作家にならなかったらこういう仕事をしたかったなぁ、というのが実は4つあります。@建築家、A文房具デザイナー/コンサルタント、Bお坊さん、C舞台監督、です。
まず、建築家という職業は、私には作家にとても近い仕事のように思えるのです。私が作家になりたいと思ったのは、自分が帰属する場所、つまり自分の家みたいなものを作りたかったからです。日本でもないアメリカでもない、自分だけの場所。いろいろなものが入り交ざった自分という人間が、心地よく過ごせる場所が欲しかったのです。
私は、好きな本を読んでいると、狭い家の机の前や、座る場所がないぐらい散らかったソファーに座っていても、満ち足りた気分になることがあります。例えば『秘密の花園』の中で、ディッコンのお母さんが、庭で子供たちにぶどうパンを食べさせてくれるシーンなどでは、自分も、そこでみんなと一緒いるような気さえしてきます(食い意地パワーをフルに活用して想像を膨らますちょびつき筆者!?)。
そんな落ち着いた楽しい場所を、もし自分が実際に創ることができたら、素敵だと思うのです。心地良い「物理的な」空間を創り出す建築家の仕事は、やっぱり「面白そうだな〜」と。自分が自分らしくいられる場所では、家族や親友たちとの豊かな時間を共有できるし、新しい自分を発見することもあるでしょう。言葉や文章などの、"intangible"(手で触れてみることができない)なものと向き合っていると、建物のように"tangible"(手で触れてみることができる)なものの魅力が、逆に強く感じられたりもして、建築家に憧れるのかもしれませんが…。
2つ目は文房具デザインの仕事ですが、私は病的な文房具好きです。飽きるということがありません。今ある文房具を調査・研究(?)しているだけでなく、「こんな文房具があったらいいな〜」ということを、常に考えているんです。『私の理想の文房具』という本でも出したいぐらい(笑)。日本の文房具は、ほんとうに使いやすくて種類も豊富ですが、まだまだ研究の余地があると思います。
例えば、コスメ(化粧品)の世界。デパートでコスメの売り場を見ていると、新製品の色やパッケージ、使い心地は私たちユーザーが考えつくレベルを超えています。つまり、いつも新製品が顧客のニーズを「先取り」しているように思えるのです。
ところが、文房具は「私だったら、こういうふうに作るなぁ」とかいったアイディアが次々に浮かんでしまいます。素人の私がそういったこと思いつくということは、まだまだ成長していける業界ということ。だからこそ、文房具デザイナーは面白いはずです。ちなみに文房具コンサルタントという仕事は、実際には世の中に存在しないかもしれませんが(笑)、私のイメージの中では、お客様の趣味しこうを聞いて、その人に合った筆記用具やステイショナリーをデザインしたり、お勧めしたりするお仕事です。お客様の雰囲気や用途にぴったりあった万年筆やインクの色なんかをセレクトしてあげるんです。考えただけでも、やりがいのある、楽しそうな仕事です。ひひひ。
次は、お坊さんです。私もこの年になるまでには、祖父母の葬儀を含め、いくつかのお葬式を経験してきました。初めて出たお葬式は、母方の祖父を亡くしたときですが、優しい祖父を想って、それから一ヵ月毎晩泣きました。けれども、お葬式や四十九日で、お坊さんがお経をあげてくださったり、お釈迦様の話を聞かせてくださったりしたことで、とても慰められました。
そんな経験から、人が人生で一番悲しいときに、癒しを与えられるようなお経やお説教ができる職業を素晴らしいと思うようになったのです。
また、私は16歳から23歳までアメリカで教育を受けたので、日本の文化についてもっとちゃんと勉強したい、という気持ちもあります。仏教を勉強することで、日本や日本語について理解を深められるのではという期待感が、お坊さんという職業に憧れる理由のひとつかもしれません。
最後は、舞台監督です。スクリプトを書いて、自分の好きな女優や俳優を自由にキャスティングするのは実に面白そうです。最近は、吉永小百合さん、竹野内豊さん、宮沢りえさん、クォン・サンウさんが登場するスクリプトを、ちょこっと書いてみました。このキャスト、豪華すぎませんか? こんな「スクリプト書きごっこ」は、楽しいですよ。ぜひ、お友だちとブログ上ででも試してみてください!
でも、作家のいいところは、自分がなれなかったものになったかのように、ストーリーが書けるところかな。ふふふ。
つづく
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