文章を書く仕事をしていると、机の前に座っている時間が長いので、ちょびつき筆者は健康のためにも、いろいろと運動をすることにしています。ちょうど、弟のぽーちゃん(昔は、やせっぽち君だったことから、家ではそう呼ばれている)が、12年間アメリカで勉強したプロのアスレチック・トレナーなので、さっそく指導をしてもらうことに!?
ジョギングと筋トレをうまく取り入れましょう、ということで、まずは2人で山梨の家の周りを走り始めました。
「かなちゃーん、それじゃ、いくらなんでも遅すぎるよ〜。心拍数がぜんぜん上がってないから、脂肪も燃焼しないよ〜」
と、ずいぶん前を走る弟が叫んでいます。
「そ、そ、そんなこと言っても、これが精一杯なのじゃ〜」
「そんなペースじゃ、歩いている人に追い越されちゃうよ〜。ほらほら〜、隣の田んぼを走っている耕運機に追い越された!」
と、余裕綽々で、私の回りを行ったり来たりしているぽーちゃん。追いつきたいと思うのですが、苦しくてたまりません。
ゼエゼエ言いながら帰宅すると、たまたま父の馬術競技場にLAから馬術指導に来ていた、コーチのドンさんことドナルドさんが、
"What's up with you, sweetheart? Where have you been?"
(ひどい形相をして、どうしたんだ? なにをしていたの?)
と、聞きました。
"Don, you know it's just old age. It's catching up on me. I just went for an easy 40-minute jog with Po. "
(ああ、ドンさん、つまり、年を取ってきたというやつですよ、私も、いよいよね。ぽーちゃんと、軽いジョギングを40分やっただけなんだけどね)
と、返事をしました。
するとドンさんは、
"Think about the altitude here. Don't forget that this place is more than 1,000 meters above sea level. The air is thin."
(ここの標高を考えないと! 標高1000メートル超えてるじゃない。空気も薄いんだよ)
これを聞いた私は、思い出したように心拍数が急に上がり(?)、ぽーちゃんに、
「これじゃあ、高山トレーニングだよ〜。遅いのは当然じゃないか〜。東京なら、もっと早く走れるんじゃ〜」
と、言い訳しました。
しかし、ここでのジョギングの敵は標高だけではありません。我が家の近くは、マムシ谷と呼ばれていて、よく蛇が出没するんです。ボーっとしてジョギングしていると、
「きゃー、ヘビ!」
ということが、月に何度かある。夕方でちょっと暗くなってくると、だれかが道に捨てた干からびたバナナの皮とか、車のライトがあたると動いているようにも見える小枝までヘビに見えるからビクビクものです。もちろんヘビは恐いのですが、実は、私はなぜか、"smaller and less harmful"(ヘビより小さくて害のない)カエルのほうがもっと恐いのでありました。
小さいときに、王子様になるカエルの話を読みましたが、例えカエルが白馬の王子様になったとしても、ぜったい近寄りたくない、というぐらい苦手なのです。ところが、田んぼに囲まれた我が家の近辺には、とてつもない数のカエルが生息しているのであります。そんな環境で、カエルに出くわさないように、または、出くわしてもすぐ逃げられるようにジョギングするとなると、もう、これは一種の"adventure"(冒険)の領域に入るのであります(苦笑)。
40分ほどのジョギングコースの最後には、急な坂があります。弟が言うには、ジョギングとダッシュのコンビネーションが効果的だということで、この坂をダッシュで10回上る、という驚異的なトレーニング・メニューを提案してきました。しかし、ダッシュのはずが、1本目ですでに、ジョギングのペースに戻っているちょびつき選手を見て、ため息をつくトレーナさん。
それでも懲りずに、家に着いてからは、ピラティス(Pilates)とか呼ばれる筋トレにとりかかるのですが、
「こりゃ、筋肉がゼロだね?」
と、呆れはてたトレーナーさんは、
「はい、もう1回!はい、まだまだーぁ。はい、続けて。はい、あと3回。はい、あと4回」
と、ちょびつき選手の苦しむ姿を見て喜ぶのでありました。
「ちょっと〜、どうして、3回の次が4回なんじゃ〜」
子どものときにお菓子を奪った報復を受けている筆者なのでした。
つづく
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