先週、『週刊ST』の武藤さんの留学日記の拝読し、「もう最終回か〜」と残念に感じるのと同時に、自分の国に帰ってきているのに
"It was as though to speak like that in Japanese was somehow artificial."
(そうして日本語を話すことが、どういうわけかわざとらしい感じがしました)
というくだりなど、共感するところがたくさんありました。
そういう私は4月には33歳に?!23歳の夏にアメリカの大学を卒業して帰国したことを考えると、もう、かれこれ10年の月日が経ってしまったということになります(涙)。10年前、帰国後にすぐ作ったパスポートが依然として活用されず新品同様なのは、いささか悲しいところですが、今年こそはアメリカに行ってみたいです…。
さて、7年の留学から戻ってから10年も経つと、
"How do you keep up your English?"
(どうやって、英語を忘れないようにしてるの?)
なんて聞かれることもしばしばです。
「いや〜、実は、deteriorating(低下)しっぱなしですよ〜(苦笑)」
というのが本音ですが、英語にまったく触れていないというわけでもありません。
アメリカでの高校時代はペンシルベニア州の英語、大学時代はニューヨークの英語を聞くことが多かったのですが、帰国してからは、アメリカでも別の地方の英語や、イギリスの英語、オーストラリアの英語など、さまざまなアクセントの英語を話すスタッフの方たちと仕事をする機会がありました。
大学の卒業前に、同じ留学生のケイコちゃんとイギリス旅行をしたときは、イギリス英語がぜんぜん聞き取れずに、外交はいっさいがっさいケイコちゃんまかせという恥ずべき事態もありましたが、今では、一人旅をしても、食事ぐらいにはありつけそうです。もっとも、"no sense of direction"(方向音痴)という別の問題を解決しなければなりませんが…(苦笑)。
帰国後リスニングの面ではそういった恵まれた環境にいました。なので日本に帰ってきてから一人で勉強を続けたのは、reading(読むこと)とwriting(書くこと)でした。そこで今日は、週刊STオンラインの読者の皆様に、readingの勉強方法を少しご紹介できればと思います。
まず、私は、英語で書かれている文章を読むとき、気になる単語には○印、重要だと思われるセンテンスには、線を引きながら読みます。とても重要なセンテンスには、線だけでなく☆マークを余白に書き込みます。あとからそのキー・センテンスを繰り返し読むことができるようにです。1冊の本の中で☆が3つ(☆☆☆といった感じで)も並ぶほど重要なキー・センテンスが、いくつかあるものですが、三ツ星以上のセンテンスは、たいてい暗記してしまいます。
数ページ読むごとに、繰り返し出てくる単語や使い方がはっきりしない単語を電子辞書で引きます。知らない単語に出合ってすぐに辞書を引いてしまうと、その単語がどういったcontext(前後関係、文脈)で使われているのかを自分で考えなくなってしまうからです。頻繁に出てくる単語は、その単語が文章全体を理解するのに必要であることが分かります。知らない単語をはじからすべて辞書で引くと、どれが重要な単語か分からなくなりますし、頭が飽和状態になるので、的を絞って調べることがポイントです。また、辞書を引く際には、動詞、形容詞、副詞、名詞の順序で引くといいでしょう。意味の分からない単語が1ページに10も20もあったら、まず、動詞を2つぐらい引いてみてください。
紙の辞書を使うと本を読む速度が遅くなるので、私自身は電子辞書の方が好きです。重要な単語は、あとでノートやインデックス・カードに拾い出して、ウェブスターなどの英英辞書で別の使い方などを見るといいでしょう。詩を読むときにはOxford English Dictionaryも併用して言葉の歴史も勉強します。それまでにその単語がどういう使われ方をしてきたかを確認するためです。また、同じ単語でも300〜400年前には、別の意味をしていた可能性があるからです。
短期間でたくさん単語だけを覚えるならflash cardなどが役立ちますが、ほんとうに言葉を自分の身体の一部にしたい場合は、contextの中で、または、絵や写真と一緒に覚えることをおススメします。
この単語や表現はこの本のこういう場面で使われていた、というような覚え方をすると、不思議と10年たってもあまり忘れません。大切な人の名前は忘れないのと同じように、英単語が単なるアルファベットの羅列から、自分の心を表すひとつの言葉になった瞬間に、その単語は忘れられないものに変化するからです。
例えば、William Shakespeareの"Timon of Athens(アテネのタイモン)"には、アペマンタスが、主人公のタイモンを非難するシーンがあります。
「あんたは人間というものの両極端のみ知っていて、中庸をしらん。金ピカの服を着て香水をプンプンさせていたころは、みんな凝りに凝ったぜいたくさゆえにあんたをばかにしたものだ、おんぼろの服を着てからは、逆にちっとも身なりにかまわないで軽蔑されているんだ」(小田島雄志・訳)
となっています。ここの「両極端」は原文ではthe extremity of both endsですが、これを辞書で引いてただ「極度、窮地」と暗記するよりも、シェークスピアの悲劇の一幕とともに覚える方が、単語が身に付くというわけです。
"Wait just a minute, Kana. That's easier said than done. I haven't got the time!"
(ちょいと待っておくれよ、おカナさん、そんな悠長なことをいって英語を勉強する時間はないんですから〜)
という、声が…(苦笑)。
でも、安心してください。
"There is no shortcut to mastering of English. "
(英語をマスターする近道はない)
と言っているわけではないんです(笑)。Taking the long way(遠回りをすること)で、しっかり身に付けられるという意味なのです
つづく
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