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「ちょびつき留学英語日記」好評発売中!
未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[作家編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。コロンビア大学卒業生石黒加奈が、留学生活、ジャパンタイムズ電子メディア局部長を経て作家生活をスタート!子どものころからの夢だった『物書き』の日々を書いた「ちょびつき」留学日記・作家生活編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 19 : ダイエット・シーズンの巻

先日、私と弟の共通の友人が山梨の自宅に遊びに来てくれました。お土産は、なんとチョコレート!

私が、手を叩いて大喜びしていると、弟が間髪入れず

"How could you bring more sweets to the Ultimate Candy House, man!"
(山梨きっての「お菓子の家」へ、お菓子のお土産持ってくるなんてどうなってるのさ?)

と、突っ込んでいました。

弟は、ポカーンとしている友人を冷蔵庫の前まで連れていくと、私が日ごろチョコレート菓子を隠している冷凍庫の中のスポットや、食器棚の秘密スペースに山積みになったお菓子の数々を見せています。

私は、手でメガホンを作って、

"Excuse me, can I have some privacy here?"
(え〜、そこの方々、個人情報の侵害はよしてください)

とアナウンスしたものの、反抗期をとっくに過ぎているくせに、弟は、私の抗議を無視して、なおも家の各重要スポットを見せて回っています。本棚の上、文房具が入った引き出し、コンピュータ・スクリーンの陰…などなど。

"I have never seen so much junk before."
(こんなにたくさんのお菓子、見たこともないよ!?)

と、驚く友人。

"I guess I have to tell you about the poor Ishiguro siblings' history, eh?"
(まあ、おまえさんは、分からないだろうから、石黒兄弟のみじめな過去をお話いたしやしょう…)

"Once upon a time, there lived a young girl and her little brother deep in the Yamanashi countryside. The road to their house wasn't even paved, and there was only one small shop in the nearby village. That's why their mother always cooked them sweets at home. It was only when they visited their grandmother in Tokyo that they were allowed to buy "regular" sweets from the grocery shop. What's more, the only channel they could get on TV at home was NHK so they were brought up on NHK's children's song."
(昔々、山梨のたいへんな片田舎に、ある女の子と小さな弟が暮らしておりました。家の前の道は舗装すらされておらず、町には、小さなお店が一つあるだけでした。ですから、彼らの母親は、いつも家で手作り菓子を作り、彼らが普通のお菓子を食べられたのは、東京の祖母を訪ねて行くときだけだったのです。ちゃんと映るテレビのチャンネルは、NHKだけ。よって、かわいそうな兄弟は、NHKの『みんなの歌』の番組で覚えた歌で、しりとりをして遊んだのでありました)

「っていうわけなんだよ〜。つまり、『普通のお菓子』に今でも飢えているのさ〜。小さいころに食べられなかったから。それに、お父さんは馬術の選手でとてもやせていたから『菓子ばっかり食って太るんじゃないぞ』とか、言っていたしさ〜。こうして大人になって、大きなスーパーマーケットで、両親の許可なしに自由にお菓子がいくらでも買えるとなると、ついつい、いっぱい買っちゃうんだよね〜」

と、演説したちょびつき筆者なのでありました。

「でもさ、チャン加奈(弟は、なぜか私のことを『加奈ちゃん』じゃなくて、『チャン加奈』とか呼ぶ)、最近、ちょっと太りすぎじゃない? 冬眠から出てきた熊はやせているけど、毎年、春は太っているよね」

と、鋭い指摘が!?熊と比べないでよ〜。

まあ、私が毎年、恒例のように冬の間、「お菓子の家=my literally "sweet" home(文字通りスイートなわが家)」にて、皮下脂肪を増やしていることは明白な事実ですが、ちゃんと対策も打ってあります。

そうです! ずばりアメリカではやっているboot camp(軍隊などの基礎訓練)方式のエアロビクス・ビデオを、さっそく購入したのであります!

「じゃじゃーん、この用意周到さを見よ! 頭(ず)がたか〜い。控えおろ〜」

と、DVDを取り出すと、

「去年は、ストーリト・ダンス・ダイエットDVD、その前の年は、ヒップ・ホップ風ダイエットDVD買ってきて、お菓子食べながらソファーで見てたじゃん」

と、弟。

「いやいや弟くん、なかなかintuitive(直感にすぐれている)じゃのぉ。でもさ、今年はなんと言っても、4枚セットだから! 必ずやるよ!」

そう明るく宣言したものの、弟のみならず、お菓子の家の正体を知った友人にまで疑いのまなざしを向けられたのでした(涙)。トホホ。

つづく

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